研究概要

製造業に求められるものは,ここ数十年で変化している.高度成長期には一品大量生産が求められ,それに特化した大きな自動化生産ラインが盛んに採用された. 近年では消費者嗜好の多様化に伴い,多品種化や製品ライフサイクルの短命化が進み,製造業には生産量変動への柔軟な対応や新製品製造の迅速な立ち上げが求められるようになっている. このため,人間作業者が手動で組み立てを行う「セル生産」(屋台生産)方式が自動化ラインに代わって用いられるという,いわば人間回帰的な動きが見られる. ただしセル生産には,作業者の育成コストが高く,品質管理が難しいといった問題もある. これからの生産システムには,人間作業者を中心として,人間が不得意なことは機械が支援するという,「人間・機械協調型」の製造方式が重要となると考えられる.本研究室では,人間・機械協調型の製造方式のための,

などを研究している.

研究テーマ

水平作業台ディスプレイを用いた組み立て作業支援システム

近年の多品種少量生産に適したセル生産方式は、作業初心者には適していないため、作業初心者を支援するシステムが必要である。 杉研究室では、ディスプレイを埋め込んだ作業台「水平作業台ディスプレイ」を用いた組立作業支援システムについて研究している。 水平作業台ディスプレイには、ディスプレイ上の作業物によって生じる"情報の遮蔽"を解消する必要がある。 そこで表示する情報を作業者の頭部や視線に追従させて遮蔽を解消し、作業者がストレスなく円滑に作業できるよう支援するシステムを目指す。

能動的に座面を傾動可能な椅子を用いた腰痛軽減システム

パソコンなどといったVDT(Visual Display Terminals)機器の普及に伴い,VDT作業時間が増加している. VDT作業は姿勢の固着が起こりやすい可能性が指摘されており,また,姿勢の固着により腰痛が発生することが知られている. このように長時間のVDT作業は腰痛を引き起こす可能性があり,腰痛軽減のために姿勢の固着を防ぐシステムを開発する必要がある. 本研究では,座面を様々な向き,角度に任意の速度で傾動可能な椅子を用いて,姿勢の変化を促し,姿勢の固着を防ぐことで腰痛軽減を目指している. 現在は,腰痛軽減に最適な傾動動作の研究とその根拠に関する研究とを行っている.

卓上作業支援システムにおける物品自動片付け機能の提案

卓上での作業は使用可能なスペースが限られているため,作業状況に合わせて物品の片付けや取り出しが必要となる. そういった物品の片付け・取り出しの補助を目的として卓上作業支援システムが存在する. その上で,卓上において不要な物品を自動判別し片付けを作業者の指示なしに行うことを目的として, 物品の自動片付け機能を提案する.具体的には,作業者の動作から物品の使用を判断し,状況に合わせて待機時間の調節及び不要な物品を戻すシステムを構築する.

卓上作業支援システムにおける作業履歴に基づいた物品情報のグループ化

我々は,卓上での物品の取り出し片づけを支援するシステムとして,指差しを入力インタフェースとして小型の自走トレイ群が物品を搬送する卓上作業支援システムを提案している. 本研究ではこのシステムにおいて,物品単位ではなく,一回の指示によって複数のトレイを作業単位でまとめて呼び出せるように,過去に使用した物品の履歴情報から物品のグループ化を試みる.

卓上作業支援システムにおける物品搬送トレイ群のための迅速な物品取り出し計画

卓上作業支援システムでは,物品を乗せた自走式トレイを複数使用するためトレイの動作計画が必要となる. 本研究では,作業者の手元までトレイを動かす際にトレイをできるだけ散らかさないような動作計画の構築を目的とした. 一つのトレイを動作させる際に,衝突が予想されるトレイを出来るだけ少なくなるような経路を探索するという手法を提案し,シミュレータ上で実行することで有用性を確認した.

機能的電気刺激を用いた脳-身体運動モデルに基づくニューロリハビリテーション

高齢化や生活習慣病による脳卒中を主な原因とした肢体麻痺者が増加傾向にあり,運動機能回復を目的としたリハビリ手法の開発が求められている. 本研究では,機能的電気刺激を用いて,脳賦活を引き起こしやすい電気刺激パターンで筋収縮の誘発による運動の発現と感覚フィードバックによる脳の可塑性を促し, 麻痺肢の機能回復をさせるニューロリハビリテーション手法の開発を目指す.
(同専攻横井研究室との合同研究テーマ)

機能的電気刺激時の発揮筋張力を表面筋電位から推定するための刺激電極部位と計測電極部位の検討

近年,機能的電気刺激(FES)を用いたリハビリが注目されている.FESは随意収縮とは異なる筋収縮を誘発するため筋疲労を起こしやすい. 筋疲労の蓄積は筋損傷などを引き起こし運動機能回復の妨げとなる.したがって,FESを用いたリハビリでは,筋肉の状態を知ることが重要となる. 本研究では,筋疲労の評価方法として表面筋電図を用いて筋肉の状態,具体的には発揮筋力の推定を試みる.随意収縮時において,表面筋電図から発揮筋力を推定する 先行研究を応用し,FES中での適用を検討する.しかし,筋電計測においてFESよるノイズが問題となる.そこで,FESによるノイズを低減することを目的とし, 適切な刺激部位と計測部位を検討した.

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